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未来の自分に宛てたメモ

SaaS型ライフプラン作成ソフト「FP-UNIV」をFP3級の素人が使ってみた

去年、FP3級を取得しました。私の本業はIT企画なのでこの資格を取ったところで仕事には何も影響しないのですが、勉強の過程でマネーリテラシーが上がり、資産形成の意思決定の質が上がったのでとても満足しています。

さて、そろそろ家庭を持つということで、ライフプランの作成をちゃんとやろうと決めました。 ライフプランとはライフイベント表キャッシュフローの2つを時間軸を揃えて見れるようにしたものです。ライフイベント表には人生でやりたいこと(結婚する、家を買う、車を買う、など)を、キャッシュフロー表には世帯の収入/支出を記載することで、将来にわたって家計が破綻しないかどうかが分かります。

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ライフプラン

一旦、自分の手で上記のようなライフプランを作れたのですが、FP3級を取ったとはいえ、素人のライフプラン表をもとに人生計画を決めていくのは怖いな~と感じて有料の独立ファイナンシャルプランナー(以下FP)にライフプラン作成を依頼することにしました。

その結果、やはりプロのライフプランと自分のライフプランにはかなりの差異がありました。私のライフプランでは40才以降ある程度の貯蓄をキープしたまま寿命を迎えていましたが、FPの最初の試算では60代であっさり家計が破綻しました😄

ライフプランの差異の原因

  • 年金の支給開始年齢を間違えていた
  • 将来のマクロ経済状況の想定がFPと異なった
  • 生活費の物価上昇率を想定していなかった

年金の支給開始年齢を間違えていた

恥ずかしながら、年金の支給開始年齢を60才としてキャッシュフローを計算していました。FPはここでさらに年金制度の改悪まで織り込んで支給開始年齢を68才と設定していたので、これが老後破綻という結果に繋がりました。他にも小さなミスがあり、チリツモでライフプランに影響を与えていました。これが判っただけでもプロに相談してよかったと言えます。

将来のマクロ経済状況の想定がFPと異なった

FPは住宅ローン変動金利が10年ごとに0.5%上昇する設定にしていました。返済1年目を0.5%とすると11年目に1.0%、21年目に1.5%、31年目に2.0%となります。 さきほどの年金支給開始年齢は法律で定められているパラメータなので議論の余地はありませんが、変動金利のようなマクロ経済状況が反映されるパラメータは、ライフプラン作成者の未来の展望によって変わってきます。直近20年間の変動金利(店頭金利)の推移を見ると、10年で0.5%上昇することは十分ありえそうですが、私はずっと0.5%のままという想定だったので、キャッシュフローが大きく異なりました。

ちなみに、面談中に「10年おきに繰り上げ返済したほうがいい」とアドバイスされましたが、そりゃ変動金利が10年につき0.5%も上がる前提なら誰でも繰り上げ返済するよと言いたくなります。このあたり、コンサルティングというよりはマッチポンプにしか感じられず残念でした。このFPはYouTuberでもあるんですが、とある動画では変動金利が10年につき0.25%上がる設定でライフプラン作成を実演してました。変動金利の将来想定を顧客によって変えるってどういう理由なのか、いまいち分かりませんでした…。

生活費の物価上昇率を想定していなかった

FPは物価上昇率を0.8%と設定してキャッシュフローを計算していました。 www.nli-research.co.jp こちらのニッセイ基礎研究所のレポートによると、2020年~2030年の消費者物価上昇率(予想)は平均1.3%とのことなので、たしかに0.8%はそれなりに妥当なパラメータに見えます。一方で、総務省の家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)によると、二人以上の世帯の1世帯あたり1ヶ月間の支出について、2005年~2019年までの対前年比の平均は-0.2%であり、若干下落傾向にあります。したがって、直近のトレンドが継続すると仮定するなら物価上昇率はむしろマイナスで見積もっても良いと言えます。(もちろんこの仮定が誤りの可能性も十分ありますし、生活費支出と物価上昇率を並べて扱って良いのかという問題もあります)
ちょっと悩みましたが、間を取って物価上昇率は0.3%で良いのではないかという結論になりました。

そもそも、なぜ差異が生まれるのか

  • ライフプランニングソフト自体の質
  • プランナーのソフトを扱うスキル
  • プランナーの将来経済展望

に原因があると思いました。

まずソフトがしょぼいと、計算ロジックにバグがある、詳細な前提条件を入力する方法がそもそも存在しないなどの理由で出力されるライフプランの信頼性が低くなるのは自明かと思います。また、ソフトの質が良くても、使い手のパラメータ設定が非現実的だったり、対象者の状況に即していないとやはり信頼性が低くなってしまいます。ここはファイナンシャルプランナーの経験とノウハウによって差が出てくるところではないでしょうか。さらに、さきほど差異の理由でも触れましたが、住宅ローン変動金利物価上昇率といったパラメータはプランナーの将来経済展望により変わり、出力されるキャッシュフローに長期的に影響を与えます。

今回依頼したFPは3つのライフプランを作成してくれましたが、それ以上のパターンは別料金でした。作成していただいたライフプランに大きな不満は無いのですが、たとえば変動金利の利率推移を変えてライフプランを再出力してもらうだけで追加料金が取られるというのが釈然としませんでした。いっそ自分でライフプランをパラメータを変えながら何通りも作成できるようになりたいと思い、いろいろと探してたどり着いたのがSaaS型ライフプラン作成ソフト「FP-UNIV」でした。

FP-UNIVの素晴らしい点

fp-univ.net

UIが気持ちいい

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FP-UNIVの操作画面

ライフプラン作成ソフトという性質上、どうしても入力項目が多く複雑になってしまいがちなのですが、FP-UNIVはタブ型のインターフェースによって何をどこに入力すればよいのか、素人でも初見でおおよそ見当がつきます。また、前提条件やパラメータを入力する際も上記のようにサクサク入力できるのであまりストレスを感じません。

あと、SaaSなのでブラウザさえ動けば幅広い環境で使えるのもGoodです。MacはもちろんiPadでもライフプラン作成できます。

キャッシュフローが正確

study.fp-univ.net

FP-UNIV公式によると、ライフプラン作成ソフトによって将来支出が1億円変わることもあるらしいです。1億円のブレってやばいですね。普通に人生変わります。子供をもうひとり希望してた夫婦がしょぼいライフプラン作成ソフトのシミュレーションのせいで夢を諦めて、何年か経ってから「なんか思ったより貯蓄がたまるな…?」とライフプランの誤差に気づいた頃には高齢になって産めなくなってた、なんてケース悲劇でしかないです。

あと、税制法制への追従度が半端ないことの副産物(?)として、ふるさと納税のシミュレーション機能もまためちゃくちゃ精緻です。たぶん日本一かと思います。たまに住宅ローン控除の影響を忘れてふるさと納税をMAXでやって爆死している人がいますが、そういう人はFP-UNIVに任せれば上限ビッタビタに寄附できます。

本当の必要保障額が判る

詳しい解説記事をFP-UNIV公式が出しているので、以下の記事を読んでください。 study.fp-univ.net

従来の必要保障額算出ロジック(積み上げ方式)では、人生の後半にどんどん貯蓄が増えるパターンでは真の必要保障額を過少に見積もるので、不幸が発生したタイミングによっては必要保障額では実は全然足りません。こわい。

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FP-UNIVが出力する必要保障額と死亡保障額のグラフ

FP-UNIVでは万が一がもし今年起きたら、1年後に起きたら、2年後に起きたら、x年後に起きたら…をすべて計算して、上記のようなグラフを出力します。赤い折れ線グラフはその年に万が一が起きた時の必要保障額で、積み上げグラフは死亡保障額です。つまり、この赤い折れ線グラフに追従するような形の積み上げグラフになっていれば、無駄のない必要十分な死亡保障額になっているということになります。めちゃくちゃわかりやすい。このグラフの場合は、5年目以降は最適な死亡保障額になっていますが、2年目は保障額が1200万円程度不足しているので、この時だけ保険や金融商品を検討する必要があることがすぐに分かります。

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収入保障保険を除外したグラフ

ちなみに、この積み上げグラフは個別に保険を除外することもできます。例えば紫の積み上げグラフで表されている収入保障保険を消してみるとこんなグラフになり、現在~51才まで赤い折れ線グラフにまったく届いていないので、収入保障保険は必須ということが分かります。いやー凄い。この計算ロジックExcelで組もうとしたら発狂しますよ。

FP-UNIVの改善してほしい点

まだ2週間ほどしか触っていませんが、こうだったらいいなと思うところを書きます。

教育費のデフォルト金額が安すぎる

FP-UNIVが参照している統計が古いのだと思われますが、子どもの進学パターンを入力した時にデフォルトで入力される教育費が安すぎます。 たとえば、大学私立(理系)を選択すると入学金として265,595円、年間授業料として1,043,212円がデフォルト値として入力されますが、2021年時点で、年104万円では私立大学の理系学部に通学させるのは厳しそうです。参照する統計の質には気を遣ってほしいのでここはちょっと残念でした。

例:早稲田大学基幹理工学部の年間授業料は約170万円 www.waseda.jp

私はマネーフォワード社の記事にあった数値を使いました。現実的な数字かと思います。 media.moneyforward.com

あと、自宅外通学チェック欄もあったらいいなと。チェック入れると通学している間の住居費仕送りなどが年間90万円くらい計上されるような感じで。

必要保障額分析のカバー率が相対値

FP-UNIVの必要保障額分析は本当に素晴らしいのですが、一点だけ要望を。 必要保障額に対して死亡保障額がどの程度カバーできるのかという指標として、右側に「カバー率」が百分率で表示されますが、ここは単純に(死亡保障額-必要保障額)の絶対値で表示してほしかったです。なぜなら、保険の見直し時に結局、(死亡保障額-必要保障額)の計算をするからです。
なんらかの法規制が理由でないのなら、ここは絶対値で表示してほしいと思いました。

産休育休の設定が手軽にできない

産休育休中は社会保険料の免除もあるなど、税制と絡んできて手取りの計算が複雑になってくるので、FP-UNIVで自動計算してくれるとありがたいです。子どもの誕生日(=出産予定日)と育休期間を入れるとよろしく計算してくれるイメージです。出産手当金については健保の付加給付率の入力欄まであったら最高ですね。

死亡退職金の設定が固定金額

社員が在籍中に亡くなった場合、遺族に「死亡退職金」として、仮にそのタイミングで本人が退職していれば受け取るはずだった金額(またはその一部)を支給する制度がある会社があります。 一般的には、退職金というのは在籍年数に比例して増加する性質があるので、不幸が起こるタイミングによってその支給額は変わるはずです。ところがFP-UNIVでは死亡退職金が固定金額でしか設定できないので、うまくライフプランに反映させることができずにいます。 保険の設定画面を活用すれば(1年につき1つの定期保険を設定するようなイメージ)できなくもないですが、非常に面倒なので、死亡退職金が独立した項目でかんたんに設定できるとGoodですね。

税制法制の改悪をシミュレーションする機能がほしい

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厚生年金保険料率は現在18.3%です。保険料の負担は労使折半なので、会社員であれば標準報酬月額の9.15%が毎月の給料から控除されています。この保険料率は2004年の13.93%からこっそり段階的に引き上げられて今に至っています。これがどの程度のインパクトかというと、標準報酬月額が仮に50万円の人がいたとき、保険料率が4%引き上げられると月2万円、つまり年間24万円の支出upになります。10年なら240万円。エグいですね。

少子化が改善する気配は無いので、保険料率が今後さらに上がる可能性は十分にあります。なので、そこをシミュレーションする機能がほしいと思いました。保険料率50%とかでシミュレーションして「こんな国で誰も働かないわ!」とかツッコみたい。同様の理由で、児童手当も改悪の可能性を織り込みたいです。支給額を自動計算してくれるのは有り難いのですが、「2025年で廃止」とか設定できると尚いいですね。

まとめ ライフプランニングも完全オーダーメイドの時代に

いろいろ書いたものの、FP-UNIVには感動してます。20年後も使いたい。

FP-UNIVの宣伝文句には「本当の」というフレーズがよく登場します。本当の必要保障額。本当の節税額。 これはソフトを使うほどにしっくりと来るフレーズで、他のソフトでは到達し得ないレベルで税制法制に追従し、私個人の前提条件に合わせてシミュレーションしてくれるので、目の前に現れる数字こそが「本当の」数字であると感じられます。この信頼感は素晴らしいです。

ふと、製薬業界で働いていることもあって「Precision Medicine」という言葉を思い出しました。
新型コロナで「治験」という言葉が身近になりましたが、薬の効果を証明するプロセス「治験」では、○○という疾患の患者という母集団に対して○○%効果があったのでこの薬は効能があります、というエビデンスの取り方をします。でも、十把一絡げに同じ疾患の患者さんと言いますが、患者さんひとりひとりは年齢、性別、身体的な性質、生活習慣、ヒトゲノム…etc.など様々な面で多様性がありますよね。医療の発展により、これからは患者さんひとりひとりの身体や状況に応じて治療計画がオーダーメイドに設計されるようになると言われています。これがPrecision Medicineです。Precision Medicineが現実的になるためには、個人のヒトゲノムを高速安価に解析するためのゲノムシーケンス技術のブレークスルーが必要でした。

ライフプランニングも同じで、今までは技術的な制約(あるいは故意)により、統計データを援用したり平均的な人物を想定したりして「ざっくり」シミュレーションするしかなかったところに、「FP-UNIV」というブレークスルーが起こり、個々人の希望や状況に応じた「本当の」ライフプランニングが可能になった、という時代の変遷を感じます。

私はFPでも保険募集人でもなんでもない素人ですが、これからも応援しております。

fp-univ.net